今回から何回かに分けて当院(ミルディス皮フ科 北千住院)での引き締め、たるみ治療についてお話したいと思います。
元となっている資料は当院にHIFUが導入された平成30年にカウンセリングを受けられた患者様に配布した小冊子です。
一部サービス終了した施術(ペレヴェ)についての記載も、流れを知って頂く意味もあると考え、あえて掲載しておきます。
先ずは総論的なとこから始めます。
皮膚老化は皮膚だけの問題ではない:構造・形態の変化
皮膚、脂肪、筋肉、骨が構造変化を来たし、その結果として顔貌が変化してゆきます(形、バランス、比率)

皮膚老化は皮膚だけの問題ではない:脂肪の下垂
脂肪は下記のような区画に分かれており、その中での萎縮や下垂が生じる。

The Fat Compartments of the Face: Anatomy and Clinical Implications for Cosmetic Surgeryより引用
肌に表れる“うねり”の変化が、加齢によるたるみを印象づけていた
(たるみの進行について:「カネボウ」の資料より抜粋)
これらのうねりは、加齢に伴い広範囲にはっきりと表れてくることがわかりました。
これらのうねりを、カーブの強さ(曲率κ)、 山と谷の位置と高さ(深さ)を算出して、定量的に比較してみると、頬部では、顔の中心線に近い部分のカーブの強さや高さ(深さ) が大きく、しかも、加齢とともに、より顕著に急になっていました。
また、谷の位置が顔の外側に行くにつれて下がっていくことも明らか となりました。
うねりが顔の中心線に近い部分から発生し、年齢とともに顔の外側に広がっていき、谷の位置が年齢で変化すること によってたるみが形成されてくると考えることができます。
一方、口もとでは、加齢とともに、口もと側よりも顔の外側のうねりのカーブ が急になり、口もとのたるみは、顔の外側で顕著に形成されていることがわかりました。
このように、年代ごとに徐々に変わる、うねりの大きさ、範囲、山と谷の位置といった顔の形状変化が、加齢によるたるみを印象づけていることがわかりました。

当院での引き締め治療の歴史は、IPLやジェネシス治療、レーザーフェイシャルを除外するとシネロン社のリファームSTから始まりました。
バイポーラ方式の高周波治療器ですが、今からすると熱の真皮内への入りが浅くマイルドでした。
次がTitan(タイタン)とサーマクールでした。
サーマクールは思い出深い機器ではあるのですが、いかんせん痛みが強い、チップが高額すぎるなどの問題があり、早々に撤退しました。あくまでも個人的な感想ですが、初期プロトコールの可能な限り出力を上げて、照射数は少なめでも皮下や真皮をより高温な状態にする照射方法の方が、現在の低出力で照射回数を多く(長時間照射)して痛みを軽減するとともに安全性を向上させる照射方法よりも効果が大きかったように思います。
但し初期プロトコールでの合併症として脂肪の萎縮が報告されたこともあり、安全性の点からの照射方法改善は必要だと思われるものの、低出力多数照射で効果は同等との意見もあるが感覚的には馴染まないところが残ります。
初期型はフェイスラインなど痛かったけど、やった感(やられた感)は十分で、今でも思い出深い感覚です。
当院で施術を終了したのには訳があります。
①消耗品代があまりにも高価(チップ、ジェル、シート、対極板、ガスなど)→施術代金が高価(クリニックでの値付けに限界)→当院で の患者層と合わない
②痛みが強い点が不評
③結構機械が大きい(当院が狭い)ので保管場所に困る というのが理由でした。
その後にペレヴェというサーマクールと同じ単極(モノポーラ)型高周波治療器機を導入しました。
但しサーマクールとは異なり、ハンドピースを動かしながら緩やかに熱を入れて皮膚あるいは皮下を加熱してゆくタイプであり、1カ所に端子を固定して強い高周波を流す方式ではないため痛みも少なく、安全性も高い機器です。
サーマクールでいうと初期型のドッカーンと熱を入れる方式ではなく、後期の低出力多数照射の方式に近いと考えられます。
さらにはプローブや本体の改良によって従来の機器よりも安全性が高まりつつ、皮膚へ導入される熱量が3倍になったことが導入に至った理由です。
消耗品代はかかりますが、サーマクールにくらべると数分の一にとどまります。
わずかに熱さを感じる(外眼角、こめかみなど皮膚が薄くて骨が近い部位に感じやすい)くらいで圧倒的に痛みが少ない、施術直後の引き締め感はサーマクールよりむしろ上(即効性が高い)に感じられたことなども好印象でした。
この後に導入したのが多電極(マルチポーラー)型高周波治療複合機であるエンディメッドPROです。
こちらは複合機ですので、非侵襲的治療を行うTCハンドピース以外にも、ハンドピースの付け替えにて侵襲的治療であるフラクショナルRFとしてのFSR、マイクロニードルRFとしてのインテンシフなどの治療も行うことが可能な機器です。
エンディメッドPROのTCハンドピースでは電極が直列に並んでいます。
基本的にバイポーラなのですが、電極のプラスマイナスを変化させていくことで、深部まで加熱することを可能としています。
エンディメッドPROは、この3DEEPテクノロジーによっていたずらにエネルギーを上げることなく目的とした深さで熱量を発生させることができるため、痛みを少なくしつつ皮膚の引き締めを可能としています。
低いエネルギーでよいため、皮膚表面を冷却する必要もなく皮膚表面にも適度な熱が加わります。これが最大の特徴です。
さらに、「Shaper:シェイパー」ハンドピースでは電極が同心円状に配置されており深部への熱伝達がさらにアップしています。
2017年に導入したのが高密度焦点式超音波(HIFU:High Intensity Focused Ultrasound)、HIFU(ハイフ)と略して称されることが多いULTRAFORMER3(ウルトラフォーマー3)です。
肌表面を傷つけることなく肌内部の目的の深さだけを加熱します。
このためダウンタイムなく皮膚のたるみを改善できます。
皮膚の弾力は、表皮直下の真皮と呼ばれる部分のコラーゲンやエラスチンによって保たれています。
最新機種ULTRAFORMER3はこの真皮をピンポイントにターゲットにできるのが特徴で、目元や口元のように皮膚が非常に薄い部位のちりめんジワ治療までもが可能となりました。
Titanなどの近赤外線光やPelleveやEndymedなどの高周波RFと比較すると、より皮膚の浅い層の治療も可能ですし、より深い筋膜上での引き締め治療も可能です。
従って皮下脂肪の少ない部位(目元、口元、前額、頚部など)でもより効果的な治療が可能となりました。
皮膚の厚さに応じて1.5mm、2mm、3mm、4.5mmの焦点距離を使い分けます。
皮膚表面のカートリッジから照射された超音波が、皮膚表面にダメージを与えることなく、虫眼鏡の原理で焦点があった皮膚の真皮層や皮下の筋膜上の1点で集束され、瞬間的に65~75℃の高温に温めて熱凝固ゾーンを形成します。
そのため、従来の当院での各種治療機器に比べると、やや痛みが強い部類に分類されるかと思います。
しかしながら、効果的にはよりすぐれるのではないかと期待しています。
但し、よくも悪くも焦点のあった1点にのみ収束されるためそれを複数行っても作用層が同じ層に限局されてしまいますので、肌全体の引き締め治療に際しては複数のカートリッジを組み合わせて治療する必要があります。
その点、近赤外線や高周波RFでの治療はより広い層に作用してくれるのがメリットでもあります。
最後に、よく「私にはどれが一番おすすめですか?」と聞かれますが、正直なところわかりません。
私はこうしたtightning(引き締め)の治療は、あくまでも「たるみの進行を最小限にとどめる」のが目的でもあるし、限界でもあるのだろうと思っています。
治療の効果も創傷治癒機転を利用した機序でもあり、最終的には成熟期になってゆきますし、その間に私たちは月日を重ねて皮膚組織は徐々にでも劣化し続けることを考えると、どうしても繰り返しの治療が必要です。
そのためには、「自身が負担なく繰り返し治療継続できる施術を選びましょう」というお話をよくします。
一番の問題は自身にとっても「痛み」の程度でしょう。
「痛み」の感じ取り方は人それぞれで大きく異なります。
またサーマクールでの問題点と同様に、次に問題になるのが「値段」かも知れません。
美容医療はあくまでも自分の人生を少しでも豊かに感じられるために行う一つのツールに過ぎません。
あるいは自分にプレゼントする生花のようなものかも知れません。人によって種々の好みの差があります。
「組織に熱を入れてゆく」という目的は同じあっても、そのための方法が異なり、同じ高周波RFを用いていてもペレヴェとエンディメッドでは多少施術時の感覚が異なります(TitanやHIFUと比較すると、その差は小さいですが)。
このあたりも機器を選択するにあたってのポイントになるのかも知れません。
もっといえば、そのときの気分でする施術を変えたっていいのだと私は思います。大切なのは、継続だと思います。
当院では、上記の考えから、一度引き締め治療のカウンセリングをお受け頂いた後はご自由に機器を変えてお試しいただけるようなシステムになっています。 *ノンアブレイティブな施術に限定
種類
ノンアブレイティブ(非侵襲的治療):ダウンタイムなし
1)「タイタン」:近赤外線
2)「ペレヴェ」:高周波(モノポーラ)*2020年にてサービス終了
3)「エンディメッドTC」:高周波(マルチポーラ)
4)「ウルトラフォーマー3」:高密度焦点式超音波(HIFU:High Intensity Focused Ultrasound)
付記
下記のような皮膚表面に痂皮形成を伴うような施術においても皮膚表面の引き締め効果が得られますが、深部での引き締め効果はむしろ上記の機器が勝ります。皮膚表面の瘢痕、ニキビ跡、小じわ、性状などを表面の肌を入れ替えることによって少しずつ改善する意味合いが強い治療です。
アブレイティブ(侵襲的治療):ダウンタイムあり(痂疲形成)
- 「FSR」:Fractional Skin Resurfacing フラクショナルRFとの称されます。
- 「インテンシフ」:マイクロニードルRF
- 「コア」:フラクショナル炭酸ガスレーザー
医療法人社団 精華会
ミルディス皮フ科 村上 義之