ニキビ治療にディフェリン(アダパレン)を導入する際に行っていたこと
これも2008年にディフェリンが発売されて、できるだけこの薬剤を
ニキビ治療に使用してもらいたいと、ない頭をひねって当院での
流れを作った時の資料です。恐らく2010年前後のことだと思います。
「医師側はこんなことを考えてんだ」の一例と思って頂ければ幸いです。
「抗菌剤オンリーの外用治療から脱却してもらいたい」
「ニキビの予防に目を向けてもらいたい」
という思いで私たちが取り組んだもので、
今見てもその当時の私の必死さがわかるような気がします。
1)受付待合室にて:壁面のテレビモニターにて
アクネボードの動画を目にする→ニキビの発生について知る。
2)診察室にて(視診・問診を中心に)
①皮疹の観察
②治療歴の聴取
・内服抗生剤の使用状況
・外用剤の種類
・アダパレンの使用経験の有無有ならば、その効果の程度、
刺激症状の有無、本人の製剤に対する評価を探る。
効果不良との評価であれば、使用方法・期間・量の確認。
・市販薬(ピーリング剤など角質剥離作用のあるものを中心に)
の使用状況の把握
③基礎疾患や不随する皮膚症状の確認:
AD、脂漏性皮膚炎、その他の湿疹・皮膚炎などアダパレン
使用にて刺激症状が出やすいかどうか、の参考に。
④希望する治療方針の聴取:当院には自費治療での
光治療を希望して来院する方もおられますが、
基本的には混合診療になることなどを理由にお断りしている。
3)診察室にて(アダパレンの導入について)
塩野義・ガルデルマからの小冊子と自院で開業以来改変
しながら使っている資料を渡す。
初回に時間を割いてニキビの発生、「アダパレン」の作用と
副作用ならびに簡単な対処法、治療の基本方針、日常生活上の
注意点などをまとめて説明。
以後は、短時間で本人が困っている箇所を中心に診察を行い
、改めて「アダパレン」外用がニキビ治療の中心であることを確認する。
①ニキビ治療の基本となる薬が「アダパレン」であることを最初に伝える。
②「アダパレンの作用」について説明
「アダパレン」を外用することによって、
皮膚のターンオーバーが促進(生まれ変わりを早める)される。
↓
外用継続することによって、皮膚の角質層が薄い状態が
維持されるようになる。
↓
毛孔漏斗部の角質も薄くなることによって
皮脂が詰まりにくくなる。
↓
面疱形成の抑制
↓
紅色丘疹の抑制
こうした流れを説明して、「アダパレン」外用がニキビ治療
の主軸であることを理解してもらう。
③「アダパレンの使い方:特に使用範囲」の説明
*点ではなくて、面で外用する意味を理解してもらう。
ブツブツできているところだけに塗るのではなく、
あなたにとって、ニキビの出来やすい部位には、その時に
ニキビが有る無しに関係なく1日1回お風呂上がりに外用する。
それによって微小面疱が治療されることになる。
言い換えれば、「アダパレン」を塗り続けている皮膚だけが
ニキビの出来にくい角質層の薄い状態を維持できる。
止めれば、本来あるべき姿に戻る。
④「外用抗生物質の意味と使用方法」の説明
さらに盛り上がっているような赤ニキビがあり、そこには
ニキビ菌などのばい菌が増えている訳だから、ばい菌を
押さえる成分である抗生物質(化膿止め)の塗り薬を
先ずはその部分に上乗せする。
⑤「内服抗生物質の意味と使用方法、ならびに耐性菌などの
問題点」の説明→「アダパレンが治療の中心となる理由」へ繋げる。
さらに「おでき」のような大きな赤ニキビが沢山出始めた時
には、抗生物質(化膿止め)の飲み薬の手助けを借りてでも、
少しでも早くばい菌の数を元ぐらいの量に減らすことを考える。
それによって「ニキビ痕」を最小限にとどめたい。
但し、どんなに続けて内服しても、ニキビ菌やブドウ球菌などは
常在菌だから(共存しているのだから)決してゼロにはならない。
そればかりか、よく聞くように耐性菌化するなどの問題が生じてくる。
↓
だからこそ、使用も最小限にとどめたい。
↓
だからこそ、ニキビ発生の原因の一つである「毛穴のつまり」
を処理することを中心に考える。
↓
そのための唯一の保険治療薬が「アダパレン」である。
だからこそ「アダパレン」がニキビ治療の中心となる。
この目的で行われるのが、ケミカルピーリングや
「アダパレン」外用である。
*患者のバックグラウンドによっていくつか使い分ける。
⑥「アダパレンの副作用」の説明
(普通の方)
生まれ変わりを早くする(ターンオーバーを早める)
ということは「皮を剥いてゆく」ということと同じだから、
大なり小なり皮膚ががさついたり、ということはよくよくある
ことだし、もっと敏感な人は赤みが出たり、ヒリヒリしたり、
などあったりはするけれども多くの人は1~2週間という期間を
かけて何とか使えるようになることがほとんどである。
(敏感そうな方)
がさつきまでは許容範囲だけれども、赤みヒリツキというのは
皮膚が注意信号を発しているということだから、その際には
調節を入れましょう。
その部分を避けて塗る、より薄く塗る、など。
あるいは乳液だとかクリームの後からあえて外用する。
そうすると薬の吸収が悪くなるから、効果が落ちたとしても、
刺激症状も少なくなるはず。それで使えるようになれば、
今度は使う順番を逆転させる、それも調節のうちである。
(状況に応じて追加)
*ADを基礎疾患に持っているヒトでも使えているヒトは
少なからずいる。
だから、無理をする必要がないから自分のペースで継続して
ゆくことを考えること。
*湿疹などのコントロールが先ずは優先→その後に
「アダパレン」導入を
*資料のみ渡すなど
*ターンオーバーを早めると言っても、一回転するのに
約1ヶ月はかかるわけだから、この手の外用剤は2ヶ月、
3ヶ月と続けてゆくうちに少しずつニキビの出現の確率を
少なくしているものだということを理解してもらう。
⑦「皮膚のターンオーバーへ影響を与える事項と
日常生活での注意点」
・メークや汚れをを十分に落とせていない
・水分が不足する
・紫外線に当たる
・周りに赤ニキビがある
・かぶれ、湿疹
もっと言えば
・髪の毛や衣服がすれる
・自分で触るのが刺激になる
など、ご存じのようにいろいろなことがターンオーバー
に影響を与える。
だからこそ、自分が手を出せるところからでも、日常生活
でのスキンケアの改善を考えましょう。
4)closing
では次は2週間後に「アダパレン」を使ってどうだったか、
経過をお見せ下さい。
本日は、せっかくなので「アダパレン」の使い方に関する
動画があるので参考までに見ていって下さい
スタッフへ引き継ぎ、スタッフは
「わからない箇所はありませんか?」などを確認して、別室へ誘導。
5)別室にて「ディフェリンの1,2,3メソッド」の
動画視聴:iPadにて
*視聴後にやはり「アダパレン」を使いたくないと申し出る
方も実際にはいる。→本人の意向を尊重。
医療法人社団 精華会
ミルディス皮フ科 村上 義之