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院長ブログ

『アザ』の治療について

2021年07月29日

太田母斑、ADM、異所性蒙古斑、外傷性刺青、扁平母斑について

青あざ
■太田母斑(典型的な片側性太田母斑)
■その他の両側性太田母斑(いわゆる後天性真皮メラノサイトーシス= ADM、遅発性太田母斑)
■異所性蒙古斑

茶あざ
■扁平母斑(当院保有の機器では保険適応がございません)

これらのうち、当院ではQスイッチ・アレキサンドライトレーザーならびにQスイッチ・YAGレーザーを使用しているため、 太田母斑、ADM(遅発性太田母斑)、異所性蒙古斑の治療が保健適応となります。
また、外傷性刺青という転倒などによる擦過傷を負った際に細かな異物が皮膚内に残ったまま表面の傷が治り、人工的な入れ墨と同様に異物が透けて見える状態の治療も保険適応となります。

残念ながら、茶あざと呼ばれる扁平母斑に対しては保険適応がございませんので、Qスイッチ・ルビーレーザーを保有している施設をご紹介しています。

通常のシミ(雀卵斑:ソバカス、老人性色素斑など)、入れ墨(アートメイク含む)、扁平母斑(茶あざ)などにも効果を発揮しますが、保険適応とはなりません(自費)。ご了解ください。

また当院ではQスイッチ・YAGレーザー(1,064nm、532nm)も保有していますので、自費治療では状態に応じて使い分けをいたします。しかしながら、入れ墨(アートメイク含む)の治療においては黒~青色系(使用波長:755nm、1,064nm)、赤(532nm)、緑(755nm)以外の色素の除去はできません。

肌色の入れ墨(アートメイク)では酸化鉄や酸化チタンが使用されており、照射を繰り返すことで黒色化が進み、そのあとで徐々に色調が薄くなるといわれていますが、かなりの回数を要しますし、繰り返しによって色素脱失などの可能性もあることから当院では行っていません。

また、素人とプロ(機械を含む)の入れ墨の治療では反応が異なることが多くあります。
プロが行った入れ墨では色素量が多いため治療回数がかなり多く必要になりますし、それに伴って一部に色素脱失を伴うようになってしまうのを避けられません(治療部位の色むらの残存)。

ソバカスなどの治療ではダウンタイムの少ない(テープ保護などが不要)ライムライトやオーロラなどのIPL治療を好まれる方が当院では多いようです。担当医までご相談ください。




◆太田母斑(青あざ)
比較的境界が明瞭な青みがかった褐色斑が、まぶた、頬、額などに出て来る疾患です。
通常は左右のどちらか一方に痣(あざ)が見られますが、5~8%は両側性に見られます。
特に成人期以降発症例では両側性が多いと言われています。

症例によっては眼球結膜、鼻、口蓋などにも青褐色斑が見られます。
日本人の0.4~1.1%の頻度(病院受診患者からの統計)と推定されていますが、あまり目立たないタイプ(比較的若年で発症した通常のシミやソバカスと判断されている例など)を含めると実際にはもっと高頻度に見られるものだと考えられています。

出生時にはなく、生後間もなくから目立ってくる場合(多くは生後1年以内)と、思春期以降に目立ってくる場合とがあります。
一般的には思春期頃までアザは次第に濃くなる傾向があります。

太田母斑の特徴は、通常のシミより皮膚の深いところ(真皮)にシミの色(メラニン)をつくる色素細胞(メラノサイト)が増加していることです。
そのため通常のレーザー治療や、光治療、ハイドロキノンなどによる治療は無効で、Qスイッチ付きレーザーという高出力のレーザー光線をごく短時間(1千万分の1~1億分の1秒)に放出する特殊なレーザーを用いる必要があります。

治療は1回のレーザー照射だけでは不充分で、3~4カ月おきに3回以上の治療が必要です。
照射部位が小さいときは、レーザー照射時の痛みが軽度(ゴムではじかれるような痛み)なので麻酔は必要としませんが、ある程度の大きさ(特に色調が濃い例など)では、痛みを和らげる目的で麻酔のクリームあるいはテープを使用します。

レーザー照射により真皮のメラニンはより小さく破砕されて、少しずつ組織球という細胞に掃除(貪食:どんしょく)されます。
レーザー照射により、病変である真皮内だけでなく、本来存在する表皮のメラニンにも反応するため、痂皮(かさぶた)が生じます。

また痂皮が剥がれた後もメラニンを含む細胞が破壊されたことに伴う炎症のために、レーザー照射後にシミの色は一過性に濃くなります(炎症後色素沈着)。

その後は炎症が落ち着いて表皮の色調が元に戻るとともに、真皮内のメラニンが少しずつ掃除されていってなくなるので、色は薄くなります。
壊れたメラニンが少しずつ吸収される時間を考慮して3~4カ月の間隔をあけてレーザー治療を行います(特に色調が治療回数に応じて薄くなってきた場合には、より間隔を空けることをお勧めします)。

1~2回目の治療では元の真皮内の色素が多いこともあって色調の変化が少ない場合もありますが、そのような場合でも繰り返すことによって2~3回目以降で徐々に薄くなってゆきます。また部位によっても薄くなりやすさが異なり、一般的には鼻翼部やこめかみ付近が早期に色調が改善し、眼瞼部(まぶた)が一番治療回数を要することが知られています。こうした差はあるものの、全例で照射を繰り返すことによって一定の色調改善は得られますし、5回以上の照射で80%以上改善します。

レーザー照射部に傷が残ることもありません。
照射に伴う衝撃波によって内出血を生じることや、色調の濃い症例では水疱が見られる場合もありますが、時間とともに改善します。
治療していない反対側と比べるとハリが出て小ジワなども少なくなる(肌の若返り)ことは、治療に付随するよく知られている現象です。




<当院症例写1>

治療前
1回目照射後 経過
3回目照射後 経過

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照射前
1回目照射後 経過
3回目照射後 経過


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〈症例2〉

治療前
治療後


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〈当院の症例3〉

3回目照射前
3回目照射後
4回目照射後
5回目照射後

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〈典型的な片側型太田母斑の症例★4〉

治療前
治療後

メーカー提供写真です。
最近ではなかなかここまでの方を拝見することは非常に稀です。
さすがにレーザー治療が始まって30年以上経過していますので、治療の有効性が認知されてきている結果なのだと思います。

◆その他の太田母斑
1)パラパラ型太田母斑・両側性太田母斑(symmetrical type of nevus of Ota)
褐色調の典型的な片側性太田母斑に比べると色調が淡く、点状の色素斑が左右対称性に前額、上・下眼瞼、頬部に出現し、粘膜疹はなく眼球病変も見られず、発症する年齢も10~30歳くらいまでです。
雀卵斑(ソバカス)と診断されることも少なくありません。 そのため、IPLなどの光治療では改善しません。

2)後天性両側性太田母斑様色素斑(acquired, bilateral nevus of Ota-like macule, Hori’s nevus)
前額、こめかみ、眼瞼、頬、鼻翼部などに左右対称性に褐色から青色の色素斑が思春期・成人期以降に出現し、眼球や粘膜の色素斑は出現しないもので、肝斑と誤診されることも多いと言われています。
そのためトランシーノ内服や美白剤(ハイドロキノンなど)外用ではもちろん改善しません。

3)nevus fusco-caeruleus zygomaticus(Sun’s nevus)
台湾のSunらが報告した病名・疾患ですが、1)の両側性太田母斑と同様の疾患状態と考えられています。
これらはいずれも太田母斑と同様の範疇に属する疾患と考えられています。
端的に表現すれば顔面に生じた後天性の真皮メラノサイトーシスであり、これらすべてを統括した呼称として後天性真皮メラノサイトーシス(acquired dermal melanocytosis : ADM)とも称されます。

4)infraorbital ring-shaped melanosis(目の下の隈)   Periorbital ring-shaped melanosis(パンダ様太田母斑)
帝京大学の渡辺教授らが提唱したもので、日本人の「目の下の隈」の多くは真皮メラノサイトーシスであるとする趣旨の論文からきている疾患病名です。
同様に下眼瞼だけではなく上・下眼瞼ともに青黒く(目の周りが灰青色~灰褐色であたかもパンダに似る)見える患者さんも、皮膚生検を行うと真皮にメラノサイトが存在することから「パンダ様太田母斑」と称されています。

いずれも治療は通常の太田母斑と同様で、Qスイッチ・アレキサンドライトレーザーの適応となります。
また色調からもわかるように典型的な片側性太田母斑に比べると色素の位置がやや真皮内の浅い部位にとどまること、さらに色素の数自体も少ないことから、より少ない照射回数で改善されることが多いようです。



◆異所性蒙古斑
蒙古斑は、新生児の仙骨部や腰殿部にみられる青色斑です。
我々黄色人種では乳幼児のほぼ100%の頻度で蒙古斑が見られます。
生後2年頃までは青色調が増しますが、その後退色に向かいます。大部分は10歳前後で消失することが多いとされています。
数%程度の割合で殿裂部に成人期になっても消退しない小型の青色斑が残存する場合もあります(持続性蒙古斑)。

蒙古斑が仙骨部や腰殿部以外の、手足や四肢、肩や躯幹(側腹部など)に現れた場合で色調の濃いものに関しては異所性蒙古斑と呼ばれ、自然消退が期待しづらいため、レーザー治療の適応となります。

いつレーザー治療を行うのかというのは非常に難しい点ですが、幼少期より治療を開始した方が、皮膚が薄いため治療の効果が高いことが知られています。
そのため、手足や背部など水着で隠れない部位(目立つ部位)にあり、色調の濃い症例では幼小児期での治療をお勧めしています。
一方で範囲が広くても薄いものは自然消退する可能性が高いことから経過観察を行うのが一般的です。
治療は太田母斑と同様で、Qスイッチ・レーザーの適応となります。

広範囲の症例は当院では対応困難なため、大学病院などの高次施設をご紹介しています。

異所性蒙古斑
異所性蒙古斑
















◆外傷性刺青
外傷により皮膚の中に砂やタールなどの色素が閉じ込められた状態のまま表面が上皮化(治癒)してしまったものを外傷性刺青といいます。
同様にQスイッチ・アレキサンドライトレーザーで除去することができます。
頻度として多いのは転倒後や鉛筆の芯がささって生じた外傷性刺青です。

一般的には太田母斑などと比較すると皮膚内の色素量が少ないことが多いため、少ない治療回数で終了する場合が多いので、是非お気軽にご相談下さい。
但し、色素の種類や深さによっては、取れにくい場合もあります。

下記症例はメーカー提供の外傷性刺青ではなく人工的な刺青です。

治療前
治療後











◆治療の流れ

① 診察 まずはご来院いただき、診察を行います。
②治療法の説明 レーザー治療についてご説明いたします。
③麻酔
病変部に麻酔のクリーム(エムラクリーム)を塗布し、しばし時間を待ちます。
④レーザー照射
病変部にレーザーを照射します。表面麻酔を行っていますが、レーザー照射に伴う衝撃は感じますし、色調が濃い部位やより敏感な部位では軽度の痛みを伴います(「全くの無痛ではない」ことをご理解ください)。
色調の濃い病変が上眼瞼にあり外用表面麻酔だけでは治療困難な場合には、麻酔の注射を使用する場合があります。
また、目の周りの施術では目を保護する特殊な装具(アイ・コンタクトシェル)をコンタクト・レンズのように装着していただきます。
⑤治療終了
照射部位を冷却し、レーザー照射部位に軟膏をつけてテープで覆い治療終了となります。
⑥1~2週間後再診
治療経過をお見せください。必要時は別途再診をお願いする場合があります。
⑦その後の通院 その後は3~4カ月目以降に再来いただき、患部に脱色素斑や炎症後色素沈着が残っていないのを確認してレーザーを再照射します。色素脱失や炎症後色素沈着(レーザー照射に伴うものだけでなく、一般的な日焼けに伴う変化が患部周辺に見られる場合も含みます)が認められた場合には照射できません。


〈治療後の経過〉
レーザー照射部は数日で薄い痂皮(かさぶた)になります。かさぶたは7~10日ではがれます。 かさぶたの脱落後(治療期間中を通して)は通常のシミ治療と同様に日焼けをしないように配慮ください。

かさぶた脱落直後の時点ではあまりアザは薄くなったように感じられないと思います。

レーザー照射にてアザの原因となっている色素(メラニン)の一部破壊は行われているのですが、その後、破壊されたメラニンが組織球(お掃除細胞)によって貪食されはじめてアザが薄くなっていきます。また先に説明したように生じた炎症後色素沈着が消失するにも時間が必要です。それには通常2~3カ月必要です。これを繰り返すことによって徐々に色調は薄くなってゆきます。


◆料金
太田母斑、異所性蒙古斑、外傷性刺青については、当院ではQスイッチ・アレキサンドライトレーザー(米国キャンデラ社 ALEXレーザー)を使用しますので、治療は健康保険適応となります。

大きさ保険点数保険診療自己負担分
4cm2未満2,000点6,000円
4cm2以上16cm2未満2,370点7,110円
16cm2以上64cm2未満2,900点8,700円
64cm2以上3,950点11,850円

※すべて保険適応なので、お子様は無料になることが多いです。
その他に初診料や再診料、表面麻酔の料金などが別途必要となります。


◆よくある相談
 太田母斑、異所性蒙古斑はいつ治療をするのがよいですか?
 太田母斑はもちろん、目立つ部位の異所性蒙古斑も自然消退するかどうかを待つことなく、0歳児のうちにでも治療を開始することを当院では推奨しています。
最終的には診察のあと、ご家族でよく話し合ってご決断ください。
一刻を争うような緊急性を要する治療ではありませんから。
また、当院で0歳児など乳幼児~幼少児の顔面の太田母斑の治療を行うことはできませんので、対応可能な近隣の施設(大学病院など基幹病院)をご紹介いたします。
当院で対応可能な年齢は、治療について理解・納得して協力を得られる中学生以降が現実的なところです。 

参考までに、早期治療の利点として考えられる物を列挙しておきます。
・治療回数が少ない(トータルの治療期間が短い):皮膚が薄いため1回の治療効果が高い。
・治療範囲が少なく1回の治療時間が短い:成長による皮膚の伸展に伴い、病変部位も広がります。
・低いエネルギー密度での治療が可能で痛みや出血などのリスクが少ない:皮膚が薄いこと以外にも、ある程度の年齢まで色調が濃くなる傾向があるため。
・日焼けの機会が少なく、照射後の色素沈着、色素脱失や療痕形成などのリスクも低い。
・全身麻酔が不要:学童期などでは本人の治療への理解が得られないと治療中に激しく動きレーザー照射できないため。
・あざがあったことが子供の記憶に残らないため、その子の精神的なハンディキャップにならない。
・乳幼児期に治療が終了することで親の心理的負担も少ない。 などが挙げられます。

 デメリットは異所性蒙古斑などでは自然消退する可能性があるにも関わらず治療費をかけることですが、医療費は保険適応の疾患であり、乳幼児期などの早期治療であれば都内では無料で治療ができます(各自治体によって無料となる年齢が異なります)。

以上の点から、メリットがデメリットを上回っていると思われます。


 病変が広範囲で色調が濃いこともあり痛みが強くて外用表面麻酔だけでの治療が困難です。
 当院では全身麻酔下での治療は行えませんので、そうした対応が可能である基幹病院をご紹介いたします。当院から近い病院としては日本医科大学附属病院(千駄木駅)、東京大学附属病院(湯島駅など)、東京逓信病院(飯田橋駅)などがあります。

(引用・参照:皮膚レーザー治療プロフェッショナル/南江堂)

(以上)

医療法人社団 精華会
ミルディス皮フ科 村上 義之