東京都足立区北千住ならびに神奈川県横浜市西区
にありますミルディス皮フ科の村上です。
今回は原発性手掌多汗症治療薬として承認販売開始
された久光製薬のアポハイドローション20%
(1本4.5ml)についてご紹介します。
腋窩多汗症治療薬として抗コリン剤の外用剤が
エクロックゲル(科研製薬)とラピフォートワイプ
(マルホ)の2剤が立て続けに保険適応薬として
日本で上梓されました。
腋窩多汗症治療薬「ラピフォートワイプ2.5%」
と「エクロックゲル5%ツイストボトル」
それに引き続いて手掌多汗症治療薬として今回久光製薬
から抗コリン薬を主成分とする「アポハイドローション
20%」が発売されました。
この製品の臨床治験にも参加させて頂きましたが、正直言って、
その効果にびっくりしたのを覚えています。いくつかの
抗コリン剤を使った手掌多汗症での海外の臨床治験で思った
結果が出なかったことも聞いていましたし、40~50%の塩化
アルミニウム溶液で密閉療法をする用い方でも効果不十分
な方が多数おられる中で、単純に眠前に連日外用するだけで
有効性を実感される方が結構おられて、そうした好結果の方々
は必ずといってよいほど「早く保険で使えるようになって
欲しい」という声をお聞きしたほどですから。
逆にそれくらい悩みは深いということでもあるのでしょう。
腋窩多汗症であれば、抗コリン剤外用が効果不十分でも
ボトックス注射での治療が保険適応にまでなっていますが、
手掌多汗症では塩化アルミニウム溶液外用やイオントフォ
レーシス治療の次となるボトックス注射は保険適応
にはなっていません。
私は開業後数年までは自費診療として手掌多汗症に対する
ボトックス注射での多汗症治療を行っていましたが、
最終的には止めました。
止めた理由は
①自費で高額になってしまう
②外用麻酔や冷却だけでは痛みがかなり強い
③神経ブロックでの除痛には神経損傷のリスクがある
④一定程度の手の筋力低下が出てしまう
⑤腋窩ほどの効果持続が得られない
など様々な問題がクリアできなかったからです。
今では早々にETS(胸腔鏡下神経遮断術)を行っている施設
(当院からは四谷メディカルキューブの黒川先生を主に
ご紹介しています)にご紹介するようにしています。
でも、この「アポハイドローション20%」が出てくれたおかげで、
ETSまではしなくても日常生活を少しでも快適に過ごすことが
できる方が増えることを本当に喜ばしく思っています。
イオントフォレーシスも塩化アルミニウム溶液の密封療法も面倒で
継続できなかったという方のお声も多数お聞きします。
そんな中で連日の就寝前の単純塗布だけで一定の効果が得られる方が
おられるのですから。
前置きが長くなってしまいました。
早く本題に入りましょう。
先ずは特徴のまとめを久光製薬のHPから引用いたします。
特徴
- 本剤は、日本初※の原発性手掌多汗症治療剤です。
※:原発性手掌多汗症に対し効能又は効果を有する外用剤
(保険適用)として - 本剤は、1日1回、就寝前に適量を両手掌全体に塗布すること
で効果を発揮します
(1回の塗布量の目安:両手掌に対しポンプ5押し分)。 - 国内第Ⅲ相試験(原発性手掌多汗症患者を対象とした
プラセボ対照二重盲検比較試験:04試験)において、
主要評価項目である投与4週後における発汗量のレスポンダー
(ベースラインから発汗量が50%以上改善した患者)
の割合は、プラセボ群と比較してアポハイド®ローション20%
群で有意に高く、プラセボ群に対する優越性が検証されました
(p<0.001、Fisherの直接確率法)。 - オキシブチニン塩酸塩は、エクリン汗腺に発現するムスカリン
受容体にオキシブチニンが結合することで抗コリン作用を
有することにより、抑汗作用を示すと考えられています。 - 重大な副作用(頻度不明)として、血小板減少、麻痺性イレウス、
尿閉があらわれるおそれがあります。また、主な副作用
(1~5%未満)として、適用部位皮膚炎、適用部位そう痒感、
適用部位湿疹、皮脂欠乏症、口渇が報告されています。
詳細は、電子化された添付文書の副作用及び臨床成績の
安全性の結果をご参照ください。
用法・用量(主なもの)
1日1回、就寝前に適量を両手掌全体に塗布する
用法及び用量に関連する注意
1回の塗布量は、両手掌に対しポンプ5押し分を目安とすること
使い方
1日1回、就寝前に適量を両手掌全体に塗布します。
1回の塗布量は、両手掌に対しポンプ5押し分が目安です。
塗布後、翌朝起床時に手洗いをするまでは薬剤が落ちないよう
に手がぬれるような行為を控えてください。
起床後、手を洗うまでの間は、塗布部位以外(眼等)に
触れないようにしてください。
万一、塗布時に眼に入った場合は、直ちに水で洗い流し、
眼科受診してください。
塗布後に気密性の高い手袋等で手掌を覆って密封しないでください。
*高濃度の抗コリン剤だからこそ、これだけの有効性を発揮
しているのですし、外用部位が手であるからこそ就眠中に無意識
での顔への薬剤の付着などもあり得ますので、十分の注意を
お願いいたします。
目の周囲では瞳孔が散瞳(黒眼が開いた状態が続く)してしまうため、
「光がまぶしい」「ピントが合いづらい」といった症状が認められます
ので、朝に散瞳した状態では自動車の運転などには支障が生じます。
くれぐれも注意してください。
気密性の高くない軍手などのような手袋を活用するのも
一法かも知れません。
アポハイドローションを使えない方
妊娠中の方・授乳中の方・緑内障の方・前立腺肥大症の方・手掌に
傷や湿疹等のある方・甲状腺機能亢進症の方・うっ滞性心不全
の方・不整脈の方・潰瘍性大腸炎の方・パーキンソン症または
脳血管障害のある方等
副作用
重大な副作用(頻度不明)として、血小板減少、麻痺性イレウス、
尿閉があらわれるおそれがあります。
また、主な副作用(1~5%未満)として、適用部位皮膚炎、
適用部位そう痒感、適用部位湿疹、皮脂欠乏症、口渇が報告
されています。
とありますが、主に危惧されるのは抗コリン剤に共通した
抗コリン作用としての口の渇き、光をまぶしく感じる等と
外用局所のかぶれなどの刺激症状だろうと思われます。
繰り返しになりますが、高濃度の抗コリン剤ですから。
アポハイドローションの治療費
最後にお値段です。
アポハイドローション20% 1本4.5ml(7日分)
薬価2,360円(3割負担の方の自己負担額 710円)
*新薬の制限のため発売から1年間は1回の処方が
2週間分までという処方制限があります。
そのため、1回に2本まで(3割負担の方の自己負担額
として2週間分で1,420円)となります。
ミルディス皮フ科
村上 義之