上の画像はライナス・ポーリング博士です。
そもそも「オーソモレキュラー療法」は分子整合栄養医学、
分子栄養学とも呼ばれ、1960年代に米国のライナス・
ポーリング博士、カナダのエイブラム・ホッファー博士ら
が提唱したものです。
ポーリング博士は54年にノーベル化学賞を受賞した世界的な
生化学者であり、ビタミンCの研究でも知られています。
さて、サプリメントの代表といえば、多くの方がビタミンC
を思い浮かべることでしょう。
美容に興味のある方にとってビタミンC=美白かも知れません。
では、普通にシナール錠を1日3回、一粒(200mg)ずつを
毎日飲み続けるとどんどん肌が白くなってゆくのでしょうか?
ビタミンCの代表的な働きとして下記のようなことが挙げられ、
酸化還元反応に関わるビタミンCは、脂質代謝やホルモンの生成など、
体のなかのさまざまな酸化還元反応に関わっています。
ビタミンEとの組み合わせで、抗酸化作用を発現し酸化された
ビタミンEをもとに戻す働きがあります。
コラーゲンを作るための必須要素
ヒトの体のタンパク質の約3割を占めるコラーゲンは、繊維状の
タンパク質であり、皮膚・血管・軟骨などに存在して組織を強固
にしています。
コラーゲンを合成するためには、ビタミンCが欠かせません。
鉄の吸収を助ける
鉄は主に赤血球を作る材料になるミネラルです。
さらにはミトコンドリア内でのエネルギー産生にも欠かせません。
鉄には2種類あり、動物性食品に含まれているヘム鉄と、
植物性食品に含まれている非ヘム鉄があります。
ヘム鉄は体に吸収されやすいのですが、非ヘム鉄は
吸収効率が悪いことが知られています。
ビタミンCを一緒に摂ると、非ヘム鉄の腸からの吸収が上がります。
その他にも
・免疫力アップ:白血球の走化性亢進
・アドレナリンやオキシトシンなどの神経伝達物質やホルモン産生、
脂肪酸をミトコンドリア内に運搬してエネルギー産生に使えるように
するカルニチンの産生、などに関わる酵素の補酵素
・メラニン色素産生抑制など多岐にわたります。
ビタミンCは、メラニンが作られる際に働くチロシナーゼ酵素
の活性を阻害するとされています。
また、一度合成された酸化型の黒色メラニンを還元型の
淡色メラニンにすることも分かっており、ユーメラニン
(黒色メラニン)合成抑制作用と、合成されたユーメラニン
(黒色メラニン)を脱色する2つの効果が期待できます。
分子栄養学を習うと、最初に教えていただくこととして
「サプリメントを効かせるカギ」なるものがあります。
1)ドーズレスポンス
栄養素は欠乏症を治すだけのものではない。
使用量によって作用が異なる。
2)個体差
特に脳は他の臓器に比べて栄養への依存度が高い。
個々人によって必要なものも異なる。
3)局在を考える
副腎を治療したいなら、副腎に多く存在する栄養を摂る。
4)栄養素の種類と性質
ビタミン、ミネラルの違いを知って使い分ける。
5)You are what you digest.
あなたの身体はあなたが食べた(消化吸収した)
ものでできている。
消化できないサプリは腸のゴミでしかない。
6)食事
サプリは食事の代替えには決してならない。
基本はあくまでも食事である。
7)効かない理由を考える
量?重金属?炎症?ストレス?食事?など
今回は
1)ドーズレスポンス
3)局在を考える
とビタミンCについてお話したいと思います。
1)ドーズレスポンス
前回のビタミンDの話の時にも出てきた言葉です。
栄養素の最低必要量と最適量(至適量)は異なるということ。
使用量によって作用が異なる、目的によって使用量が
異なるということでもあります。
栄養素 | ビタミンB1 | ナイアシン | 葉酸 | ビタミンC | ビタミンD |
最低必要量 | 脚気の予防 | ペラグラの予防 | 二分脊椎の予防 | 壊血病の予防 | くる病の予防 |
最適量 | ミトコンドリア活性化 | 統合失調症の改善 | メチレーション回路 | がん、風邪 | 免疫、がん |
表のように各栄養素において使用量によって作用、
目的が異なります。
現在、日本ではビタミンCについて成人では1日の
推奨量が100㎎(2015年版食事摂取基準)と設定
されています。
健康な状態であればそれでも良いのかもしれま
せんが、病気になると栄養素の必要量は異なって
きます。
ヒト、サル、モルモットなどはビタミンCを自分では
作れませんが、ヤギ、ブタ、犬などの動物は自分の
体内でビタミンCを合成できます。
健康なヤギは1日に7gのビタミンCを合成しますが、
病気になると100gのビタミンCを合成して対処
していると言われています。
すなわち
自分でビタミンC を作れない我々ヒトは状況に応じて
摂取量を調整すべきだと考えられます。
では、どのように摂取するのでしょうか?
それには、見づらいですが下記のグラフにあるように
経口(内服)では決して点滴静注のような高い血中濃度
は得られないということを先ずは知っておかねばなりません。
それもあってビタミンCのガン治療目的での点滴は100g
などの大量投与が必要となります。
では、経口(内服)ではどのような摂取の仕方がよいのか?
ビタミンCが排泄される4時間以内に次のビタミンCを摂取
することで血中濃度を上昇させることができる。
ビタミンCの吸収率から考えると1回1gの内服が効率的である。
そのため
ビタミンCは1gずつ1時間ごとの頻回摂取が有効とされています。
こうした効果的な内服方法を知っておいて、自身が風邪を
ひいた時などに応用されると良いでしょう。
ビタミンC血中濃度と得られる効果をまとめたものが
下記の表になります。
ビタミンC血中濃度(mg/dl) | 得られる効果 | |
壊血病のハイリスク | 0.2以下 | |
健常人 | 0.5~1.5 | 壊血病を防ぐ |
1g摂取30分後 | 1.5 | |
1g1時間ごと摂取 | 3.9 | 風邪 |
ビタミンC点滴15g | 100 | がん |
目的別にビタミンCの摂取至適量(1日あたり)の
おおざっぱな目安としては、
・怪我を治りやすくする:100mg
・風邪:1~10g
・副腎疲労:数10g
・ガン:100g
私自身は副腎疲労で甲状腺機能低下まで生じていたときは
上記の1時間ごとの内服を目標に10g以上を連日内服し
ていました。
身の回りの至る所にビタミンCサプリメントを置いておいて、
気がつくといつでも摂取できる環境を作っていました。
今でも私の引き出しにはビタミンCなどサプリが
ゴロゴロ入っています。
普段は1日3gを目標に小分けにして飲むように
意識しています。
風邪かな?などの時には1gずつの内服に切替ます。
局在
話しは変わって「コラーゲンを多く含む食品を食べると肌が
プルプルになる(コラーゲンが増える)」というイメージは
世間一般に広まっているものかも知れませんが、
実際には体内でアミノ酸などの低分子レベルまで消化・
分解・吸収され、身体が必要とするところで必要ものに
再構成されるための材料となります。
すなわち、その材料が肌のコラーゲンを作るために使わ
れるとも限らない訳です。
例えコラーゲン産生に使われたとしても、そのコラーゲンは
皮膚以外の臓器の血管壁の構成成分になるものかも
しれないのです。
残念ながら
消化・分解・吸収された材料は自分が希望する場所ではなく、
身体が必要としている場所で使われるということです。
栄養素の使用には優先順位があります。
個々人での違い(欠乏や病気などの状態の差)はあるで
しょうが、栄養素ごとに大まかな優先順位があります。
それが栄養素の「局在」であります。
下記は自分では人間同様にビタミンCを作れない
モルモットへの投与経路を変えたビタミンC投与後の
分布です。
血中濃度があまりあがらない内服(経口)では、脳、
水晶体、副腎に黒い色素が集積しています。
一方で点滴した個体では、内服では見られなかった肝臓、
腎臓などに加えて、切断面の皮膚にも輪郭を縁取るように
色素が集積しているのがわかります。
すなわち、点滴などを行って最重要(最も必要とされている)
臓器にビタミンCが行き渡った後で、皮膚にもビタミンCが
供給されることがわかります。
これが優先順位です。
私には経験はありませんが、ガン治療目的で連日100gの
ビタミンC点滴をされておられた方々は皆さん肌が白くなった
とのことです。
下記は横軸にビタミンC投与量、縦軸にビタミンCの
臓器内濃度を示しています。
これからわかるのは、ビタミンCの投与量が少なくても
副腎と脳だけは必要な濃度が維持されやすいということです。
要は、皮膚などの優先順位は低いということです。
必要とされる優先順位の高い臓器に行き渡った後、おこぼれ
が皮膚にも回ってゆくのでしょう。
では、最初の問いかけである
「普通にシナール錠を1日3回、一粒(200mg)ずつを毎日
飲み続けるとどんどん肌が白くなってゆくのでしょうか?」
に対する私の答えは、「恐らく困難だろう」です。
では、どうするのか?
美容と健康を兼ねてのビタミンCの静脈投与が有効
なのだろうと思います。
こうしたことから、当院でも高濃度ビタミンC点滴
(10g)を再開することになりました。
毎日、一定量のビタミンCを内服することもお忘れ無く!
そうすることによって上述のビタミンCを必要とする
優先順位の高い臓器にビタミンCが充足された状態に
近づいていれば、おこぼれのビタミンCがお肌にも
回って来やすいですよね。
ビタミンC内服の血中持続時間は1gでも4時間と短いですから、
まとめて大量に摂取するよりは小分けにして頻回に飲みましょう。
少なくともビタミンC欠乏による壊血病までは行かないまでも、
動物実験ではあるけれども下記参考資料にもあるように
「表皮が薄くなる」、「紫外線照射によるメラニン色素の
生成が増加」、「老化の進行」は避けたいものです。
あとは、皮膚なのですから、外からの投与、外用という方法
があります。
是非とも当院オリジナルの
「GOVC-フラーレン ローション」もお試し下さいね。
ついでに知っておいて頂きたいのが
「皮膚へのビタミンC塗布は紫外線を浴びる前が効果的」
であるということです。
ビタミンCが紫外線により産生される活性酸素種を消去
することによって、紫外線による細胞障害を抑制することが
知られています。
内服同様、持続継続が大切です。
当院のオリジナル商品はいずれも一般の類似商品よりは
安価に設定しています。
アスタキサンチンゲルもレチノール、セラミドまで入って
30gで5,500円(税込み)です。
アスタキサンチンゲルクリーム
フローラルケア
(参考資料)
ビタミンCが欠乏すると表皮が薄くなること、
および、紫外線照射によるメラニン色素の生成が増加する
ビタミンCについて(一般の方へ):
厚生労働省『「統合医療」に係る 情報発信等推進事業』
最後の参考資料中で紹介されているのが下記栄養素です。
私も下記は全種類(摂取量は多少異なりますが)
毎日摂っています。
栄養アプローチとして(一日摂取量目安)
・ビタミンA、ビタミンD:10,000IU
・グルタミン(アミノ酸の一種):6,000mg
・亜鉛:15~30mg
・ビタミンC:2,000mg程度を目安に、
200~250mgずつ頻回摂取
・それでも喉が痛くなったら、オリーブ葉
(オーレユーロペン)を
前回のビタミンのところではお話できませんでしたが、
腸粘膜も細胞と細胞が密にくっついてバリアとして異物
(病原菌、ウイルス、毒素、アレルゲンなど)などの
侵入を防いでくれていますが、この細胞間を密にくっつ
けているのがタイトジャンクションと言われるもので、
その作用を強める役割をビタミンDが行っています。
さらには最近やウイルスの侵入に対して身体は抗菌蛋白
(カテリシジンやディフェンシン)の産生を誘導すること
が知られています。
カテリシジンは細菌やウイルスの表面に穴を開けて死滅
させるたんぱく質。ディフェンシンはアミノ酸から
構成される、殺菌・抗ウイルス作用を持つたんぱく質です。
また、ウイルスや細菌が侵入する粘膜の最外層の粘液中に
免疫グロブリンであるIgAがリンパ球から分泌されますが、
これもタンパクであるからには身体に十分な栄養がないと
作られませんし、細胞の増殖・分化にはビタミンAやグルタ
ミンが必要ですし、ビタミンAの機能維持や各種酵素の補酵素
として亜鉛も欠かせません。
医医療法人社団
ミルディス皮フ科 村上 義之