毛細血管拡張性肉芽腫(telangiectatic granuloma)について *化膿性肉芽腫とも呼ばれます。
外傷などが誘因となって生じた、毛細血管の増殖と血管腔の拡張を伴う一種の血管腫で、数㎜~2cmの半球状に隆起した有茎性で鮮紅色から暗赤色の軟らかい腫瘤。こすったり、ひっかけたりなどの軽微な外傷で容易に出血したり増大したりします。
治療法として外科的治療ならびに保存的治療ともにいくつかの方法があります。
外科的治療
炭酸ガスレーザーによる治療では腫瘤の基部に多めに局所麻酔を注入して隆起させて添加のエピネフリンの作用も相まって腫瘤が白色調になったところを綿棒やガーゼで圧迫して出血をコントロールしながら切除・蒸散させてゆきます。
大きい場合は高周波電気メス(サージトロンなど)での処理の方が効果的だと思われます。施術後の潰瘍は軟膏やガーゼ、テープなどでの閉鎖療法を行ないます。
部位や大きさによって閉鎖療法を行なう期間が異なります。
保存的治療
ステロイド外用:薬剤の血管収縮作用に伴う一時的阻血を利用します。増大する勢いが弱まりますが、これだけで完治することは稀で、あくまでも併用療法の一つです。
液体窒素凍結療法:中心部の動静脈吻合部の血流を途絶えさせることを目指すため、強めに凍結させます。
絹糸での基部結紮による阻血:くびれがはっきりしている場合には有用です。週に1回ごとに来院していただき、少しずつより強く締め付けていって壊死→乾固化させて脱落させるのが狙いです。
当院での治療法:いずれも保険適応です。
①ステロイド外用+液体窒素凍結療法+絹糸結紮:保存的治療となります。1週間ごとに通院。
②局所麻酔注射後に電気メスや炭酸ガスレーザーで治療:外科的治療であり、軟膏やガーゼで保護が必要。
大まかな流れは下記の通りですが、個々の症例で順序や組み合わせは異なる場合があります。
1)ステロイド外用、液体窒素凍結など保存的治療を先に行い、できるだけ小さくさせる
2)有茎性のものでは絹糸などで結紮し、徐々にしめつけてゆく
3)有茎性でないもの、広基性のもの、あるいは来院時に出血がなかなか止まらないなどのときにサージトロンを使用
・隆起部分を混合でリング状の電極処理
・下床の出血部分を止血モードでボール電極(出血点など小さいときは「ヘの時型」の電極)で止血
*小さいものでは最初から「ヘの時型」の電極)で混合・止血
・トレックスガーゼやハイドロコロイドなどでドレッシング
・止血不十分あるいは不安ならソーブサンなどのアルギネート創傷被覆材を使用
下記に結紮法での代表的な経過を参考のために掲載しておきます。次第に縮小、ならびに痂皮化してゆき最終的にはいつの間にか脱落ということが多いかと思います。腫瘤に「くびれ」がないと適応しずらいのが難点です。





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・絹糸での基部結紮による阻血:くびれがはっきりしている場合には有用です。週に1回ごとに来院していただき、少しずつより強く締め付けていって壊死→乾固化させて脱落させるのが狙いです。
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患部が口唇ですから、どうしても目立ってしまいます。かといっていきなり外科的治療をと言われて戸惑われるのも解ります。大きいけれども立派にくびれもありますので結紮治療の適応なのですが、脱落までに少し時間がかかることが予想されます。そのことをご納得頂いた上で治療開始となりました。
①受診時:立派な大きさです。確かに整容的にも日常的(食事など)にも大変困っておられるのが理解できます。食事の際にひっかけて出血してさらに増大するという悪循環に陥っておられたようです。
②5日後:腫瘤全体が黒色に変化してきています。
③約2週間後:表面の痂皮が脱落して二回りほど腫瘤は縮小しています。
ここでさらに絹糸できつく締め付けます。あと一息です。
保存的治療ですから、大きさにもよりますがどうしても数週間という単位の時間がかかってしまいます。
でも外科的治療を避けたい方には大変喜ばれる古典的な方法です。
医療法人社団 精華会
ミルディス皮フ科 村上 義之