“イボ”と言われることのある
代表的な皮膚疾患の当院での治療について
1)ウイルス性疣贅
◆尋常性疣贅:足底疣贅、ミルメシア、色素性疣贅、 点状疣贅、糸状疣贅など
いずれもHPVによる感染で生じるもので、ウイルスの サブタイプや感染部位(症状出現部位)によって 異なる名称で呼ばれることがあるものの、 基本的には同類と考えて良い。 小児の手足によくみられます。特に治りにくいのが 足底疣贅で、角質が厚くなるため胼胝(タコ)や鶏眼 (ウオノメ)に似ていますが、表面の角質を削ると 点状出血がみられることが鑑別の目安になります。
融合して敷石状になったものを「モザイク」疣贅 と呼びますが、より難治です。 時に炎症反応を生じて自然脱落することもありますが、 感染症ですので増加することも多い症状です。 また治療が終了したように見えても、残存していたり 他の部位に感染して残っていたりすることもあります ので、経過観察を要します。 もしかしたら、と思ったときには早めに皮膚科を 受診しましょう。 《治療法について》
○液体窒素凍結療法 : 液体窒素を含ませた綿球を疣贅に あてがって凍結と融解を数回繰り返す方法で、最も一般的な治療法です。 1~2週間に1回程度の頻度で繰り返します。 ○ヨクイニンエキス内服療法 : 自己免疫力を高める目的で併用されます。
○電気凝固・焼灼療法 : 局所麻酔下に疣贅より一回り広め に凝固・焼灼してゆきます。 他の治療法でも同様ですが、疣贅周囲の皮膚にもHPVが 存在することが知られているため施術範囲が一回り 広めとなります。 施術後は皮膚潰瘍となりますので、上皮化までに 2~3週間を要します。 最近では炭酸ガスレーザーを頻用する傾向にあります。
○炭酸ガスレーザー蒸散療法 : 個人的には顔面の 多発する小さな疣贅(青年性扁平疣贅や顎周りの髭剃りで 拡大してゆく疣贅)などに対しては液体窒素凍結療法など に比較して、よい適応ではないかと考えています。 顔面は創傷治癒が良好で瘢痕化しにくいこと、液体窒素に 比べてより小さな範囲に限局した治療が可能であること などがその理由です。(炎症後色素沈着が小さくてすむ) もちろん、自然消退や再発の可能性もあることから、 社会生活上の理由(見栄え)、さらには髭剃りに伴う 感染拡大が問題となる場合などに、患者さん本人が 希望された場合に限り行ないます。 しかしながら、その他によい治療法がないのも事実です。
○いぼ切除・いぼ剥ぎ法 : 基本的には局所麻酔の注射をして行なうものですが、 いぼ治療の経過で患部が乾固化してきた時にはハサミや ニッパーを用いてプチいぼ剥ぎを行なう事があります。
○サリチル酸外用療法 : サリチル酸ワセリンを外用してテープを利用して ODTをしたり、スピール膏を利用して角質を ふやかします。 日々ご自身で行なって頂く処置です。施設によって はビタミンD3を用います。
○モノクロロ酢酸・トリクロロ酢酸、フェノール外用療法 : いずれもタンパク質を凝固し、強い腐食作用を示す薬剤です。 当院では足底の角質が厚いイボを削って薄くした後に 塗布しています。その後に液体窒素凍結療法を追加します。
○ロングパルスYAGレーザー治療(自費治療) : 北千住院でも導入しています。 レーザー照射時の痛みがあります。1ヶ月に1回程度で 繰り返します。
○いぼ取り地蔵にお願い: 東京で有名なイボ取り地蔵 (塩地蔵)は新宿と西新井にあります。 お地蔵さんにかかっている塩をもらってきて患部に 塗布し、もし治ったら倍の塩をお地蔵さんにかけると いうものです。 横浜では、何とミルディス皮フ科横浜西口の すぐ近くにもあるそうです。 横浜市西区宮ヶ谷51(三ツ沢公園近くの軽井沢中学の反対側) にある「原のいぼとり地蔵」がそれで、この分野で有名な 平松先生のHPでも紹介されており、ここでは地蔵さんの前の 石を持ち帰り、イボをこするとイボがとれるのだそうです。 そして、イボが取れたら小石を返して、香華を供えるとのこと。
その他、ブレオマイシン局注、PDT、チガソン内服療法、 エタノール湿布、紫雲膏外用などなど治療法は多数ありますが なかなか決め手に欠けることもあり私は上記治療しか 導入していません。
なお当院は、「液体窒素凍結療法」が基本にはなりますが 痛みで継続できない場合には、下記の併用をお勧めしています。 ☆POINT ①厚い角質除去+モノクロロ酢酸塗布 (週1~3回、クリニックにて) ②ビタミンD3+ODTあるいはスピール膏 (日々自宅にて施術) ◆扁平疣贅(青年性扁平疣贅) HPV-3,10によるウイルス性疣贅の一種で、若年者の 顔によく見られます。 わずかに隆起した数mmの扁平な丘疹が多発(時に融合)し、 一部では掻破に伴って線状に配列(自己播種、ケブネル現象) している。 自覚症状はほとんどありませんが、自然消退する際には痒み や発赤などの炎症症状が生じて治癒するものがある一方で、 数年にわたり変化なく増加する例もあります。 ヨクイニン内服以外に、希望に応じて前述の炭酸ガス レーザーでの蒸散を行ないます。 少なくとも顔剃りや眉剃りなどの行為は控えましょう。 自家播種(感染拡大)につながります。 繰り返しにはなりますが、青年性扁平疣贅や顎周りの 髭剃りで拡大してゆく疣贅などに対しては液体窒素 凍結療法などに比較して、遙かに優れた治療法だと 考えています。 顔面は創傷治癒が良好で瘢痕化しにくいこと、 液体窒素に比べてより小さな範囲に限局した治療が可能( 炎症後色素沈着が小さくてすむ)であることなどが その理由です。 前述したようにもちろん、自然消退や再発の可能性も あることから、社会生活上の理由(見栄え)、さらには 髭剃りに伴う感染拡大が問題となる場合に、患者さん 本人が施術を希望された場合に限ります。 しかしながら、その他によい治療法がないのも事実です。
問題点は施術時の痛みです。数が少なければ痛みは冷却を 併用することで多くの方で許容範囲だと思われます。 但し、数が多くなると困難になりますので、局所麻酔 クリームを外用してラップをのせて20~30分待って から施術を行ないます。 個々の皮疹は小さいのですが、50~100個を超える方も 多数おられます。 翌日からはパウダーファンデーションを使用できます。
☆POINT ①顔剃り、髭剃りを控える:感染拡大防止のため ②ヨクイニン内服:痛みも伴いません。 出来ることは行ないましょう。 ③4~5個ずつ冷却を併用して焼灼・蒸散 ④局所麻酔外用を併用してまとめて焼灼・蒸散
◆尖圭コンジローム HPV-6,11などによって外陰部に乳頭状あるいは鶏冠状の 外観を呈する性感染症の一種でもあります。 治療は液体窒素凍結療法、局所麻酔後に電気焼灼や 外科的切除、ベセルナクリーム外用などです。◆伝染性軟属腫(水いぼ) 伝染性軟属腫ウイルスによる感染症で、所謂“水いぼ”です。 治療はピンセットで除去するのが基本であり、痛みを 軽減するために1時間前から麻酔テープ(ペンレス)を 利用します。 それでも痛みが無くなる訳ではないことや、最終的には 数ヶ月から数年の単位で自然消退することも多いことから、 保護者によってはスキンケアだけを行なって経過観察する ことを選択する方もおられます。 さらには毎日患部にスピール膏を貼って、その上から ずれないように紙テープで固定する行為を繰り返す 方法もあります。 ご自宅での保護者による治療になります。 1週間ごとに再来して頂き、炎症が強いようならステロイド 外用剤などを処方することがあります。 個々の皮疹では1週間前後で治癒し、治療継続できた場合 には10週間程度でほとんどが治癒すると報告されています。 痛みを避けたいが、何らかの処置を行ないたい時の選択肢です。 いずれにしても患部周囲の乾燥肌や湿疹病変には、 外用剤を使って治療とケアを欠かさないようにしましょう。 掻破行動に伴う播種(感染拡大)は最小限にとどめたいものです。
☆POINT ①スキンケア。湿疹病変のコントロール: 感染拡大防止のためにも必ず必要です。 ②治療の基本はペンレス(麻酔テープ)貼付 1時間後にピンセットで除去:1回では終わりません。 ③痛みを回避するための方法:毎日スピール膏を ひとつひとつ皮疹のサイズにあわせて貼付(家庭での処置)
1~2週間ごとに再来して頂き炎症反応などを チェックします。
2)脂漏性角化症(老人性疣贅とも言われます)
20歳代から出現し、80才以上の高齢者では必発で、 老人性疣贅という別名が示すように、いわゆる老化に 伴って生じるイボであり、老人性色素斑(シミの一種) から生じることが多く、表面は角化性で顆粒状を呈し、 色調は常色から褐色、黒褐色まで様々です。 一般的には痒みや疼痛はありません。もちろん良性です。 病理学的には表皮基底細胞と有棘細胞の表皮内増殖ですから、 深く真皮内に及ぶ治療は不要であり、びらん状態 (浅い擦り傷)になれば治療完了です。 すなわち施術後は、ほくろなど真皮内に病変があるものより も傷が浅い分、傷跡も目立たないということになります。
指頭大などの大きく隆起したものは液体窒素凍結療法にて 治療します。 より小型で隆起が少なくなればなるほど液体窒素凍結療法 での治療は困難(炎症後色素沈着が大きく目立ちやすい) になるため、炭酸ガスレーザーでの治療がより適しています。 4~5個ずつ目立たないように10日前後で少しずつ治療して ゆく方法と、あまりにも数が多い方では一度日程調整をして いただいて、施術当日表面麻酔を外用して20~30分お待ち 頂いた後で、可及的に目に付くイボを焼灼・蒸散させてゆく ほうが効率的です。 拡大鏡を用いて目に付くものはできるだけ処理してゆきます ので、処理数が100個を超えられる方も珍しくありません。 少し大きめのものは局所麻酔の注射を行なった上で処理を 行ないます。 (大きな部位は施術後のテープ保護をお願いします) 私もそうですが、年齢が上がるに従って老眼が入ってくる こともあり、見たくないものは見えないことにして しまいがちです。 でもこの施術を受けられた方の多くは、施術後1週間には 洗顔時などの手触りが全く違うと感激されます。 顔面は傷の治りがよい部位であるということもあり、 約1週間で痂皮はほぼ脱落し、赤みも化粧で隠れるくらいまで に改善している方がほとんどです。大きなものを除けば 翌日からパウダーファンデーションを使用することは可能です。 首や体においては顔に比べると傷の治りが悪いこともあり、 赤みや痂皮の固着期間が長くなるので2週間ほどの 期間をご用意下さい。 また躯幹はどうしても顔よりも大きいものが多くなるようで、 局所麻酔の注射を併用した方が痛みは少なくなります。 治療範囲や個数によっても施術料金が異なりますので、事前 に診察を受けて頂き、治療ならびに料金に納得していただいた後、 ご予約での施術を承ります。(ご自身の日程調整)
治療前
治療直後
照射2週間後
☆POINT 〈大きい皮疹〉 ①液体窒素凍結療法:より大きなものでは、痛みの点、 施術後のコントロールの簡便さから最適です。 1個につき数回の施術が必要となります。
②局所麻酔注射後に電気メスや炭酸ガスレーザー: 1回で腫瘤を除去したい時、0.5~1.5cm大までのサイズに 適しています。 施術後に1週間程度のテープ保護を要します。 〈小さい皮疹:2~3mm大まで〉 ①4~5個ずつ冷却を併用して焼灼・蒸散
②局所麻酔外用を併用してまとめて焼灼・蒸散。0.5~1.5cm大 のものは局所麻酔注射を併用しますので、この部位にはテープ 保護が必要になります。 その上から翌日以降はパウダーファンデーションをご使用頂けます。
3)アクロコルドン・ skin tag ・軟性線維腫・懸垂性線維腫
頚部や腋窩、鼠径部などに好発する半球状から有茎性の 柔軟で常色から褐色調の腫瘤。 大きいモノではたるんで表面にシワが多い。 頚部や腋窩に糸状の小腫瘤(1~3mm)が多発するものを 「アクロコルドン」ないしは「スキンタッグ」、体幹に 単発するやや大きめのモノ(1cm大)を「軟性線維腫」、 さらに巨大になって皮膚から垂れ下がるようになったものを「 懸垂性線維腫」と臨床的には区別しています。 いずれも一種の加齢に伴う皮膚の変化です。 治療としては、ハサミで切除、凍結療法、サージトロン (電気メス)のラウンド型ループ電極で混合モードで切断、 炭酸ガスレーザーでの蒸散など。
頚部で非常に細かいものが多発している方が時におられます。 その場合、当院では自費治療にはなりますが日程を調整して いただいてからの炭酸ガスレーザーでの一括処理をお勧め しています。 前述の顔に多発した老人性疣贅の治療と同じく、表面麻酔を 外用して20~30分お待ち頂いた後で、可及的に目に付くイボ を一つ一つ炭酸ガスレーザーで蒸散させてゆきます。 こちらも施術をお受け頂いた方には大変好評で、 「こんな簡単に解決することなら、もっと早く施術を 受ければよかった」とも言われます。 但し施術を受けるに際して、顔よりも痂皮が付着したり 赤みが強い期間が長くなります。(約2週間) そのため衣服の襟やストール、マフラーなどで患部を隠す 必要があります。 必然的に施術を受けるのに望ましいのは秋以降の季節でしょう。 施術後は小さい擦り傷状態になりますので、翌日からはひりつく などの症状がある部位にはワセリンなどの外用剤で保護を お願いしています。 大きめの軟性線維腫や懸垂性線維腫では局所麻酔の注射を 行なった上で切除します。 ☆POINT ①小さくて飛び出したタイプ(4~5個): ハサミで切除、液体窒素凍結療法 ②小さいのが多発したタイプ:表面麻酔後にハサミ、 炭酸ガスレーザーを駆使してまとめて処理。 ③大きく懸垂したタイプ:大きさによって切除・縫縮あるいは 電気メスで切除後開放治療で上皮化を待つ。▲コラム▲
顔面の老人性疣贅にせよ頚部のアクロコルドンにせよ一度 まとめて施術したとしても、時間が経てば再発ならびに その時点では予備軍でしかなかったものが成長して、 はっきりわかる大きさにまでなるものが必ずあります。 治療についてはマンションの補修と同じように考えて頂ければ と思います。時に大規模補修、その合間に小規模補修を 入れることによって良い状態を長く維持することが可能 になります。 両疾患の治療についても同じ事が言えるのではないでしょうか?
3)稗粒腫(ひりゅうしゅ・はいりゅうしゅ)
直径1~2mmの表皮直下に出来る白色の小丘疹で目の周り によく見られます。 こするなどの刺激や炎症によって皮膚付属器や表皮角化細胞 が破壊された角化性嚢腫で、切開により白色の角質塊が 出てきます。 一部の患者さんは「小さな脂肪の塊」というような言い方をされます。 大きめのものを選んで針や炭酸ガスレーザーで穿刺して内容物を 押し出します。 少し大きめのものでは施術後にテープ保護をしていただきます。 頬など下床に骨がある部位は穴を空けたあとは面疱圧出の要領で 押し出せるのですが、眼瞼など下床に骨がない部位ではピンセット でつまんで押し出さねばならないのでより痛みを伴います。
”こする”などの行為がないかどうか自身の日常生活を 見直しましょう。 泡洗顔、洗顔後の水分を拭き取るのにタオルを押し当てるだけで なくこする行為が加わっていないかなど。☆POINT ①穴を空けて内容物を押し出します。
4)汗管腫
エクリン汗腺の真皮内汗管が現局性に増殖したもので、 1~3mm大の常色丘疹が特に目の周りに多発し、融合して 地図状になることもあります。 痒みなどの自覚症状はほとんどありませんが、自然に 消退することもありません。 施術部位に油性マーカーやピオクタニンでマーキングを行ない、 局所麻酔の注射を行なった後に、炭酸ガスレーザーでくりぬく ように患部を蒸散させます。 (腫瘍の塊が真皮の中層あたりまで存在することが多いので、 表面を浅く削って平坦化させるだけでは不十分) 散在性(パラパラと散らばっている)のものに比べると 融合性・集族性(寄り集まって地図状になっている)のものは 改善効果に限界があります。 (広い範囲で皮膚の完全欠損をさせると創の収縮が生じることが 問題となるため) 術後は軟膏とガーゼあるいはテープで閉鎖療法を1~2週間 行ないます。 出来るだけ創を乾燥させない方が傷はきれいに治ります。 その後数ヶ月は赤みが持続しますが、そのうちに自然に軽快 してゆきます。 融合した局面が大きい場合は切除縫合することもありますが、 当院では行なっていません。 形成外科や総合病院皮膚科でご相談ください。
☆POINT ①局所麻酔後に炭酸ガスレーザーで蒸散
6)脂腺増殖症(老人性脂腺増殖症)
成熟した脂腺が増殖してわずかに皮膚面から隆起してくるもので、 高齢者の顔面(前額、頬、鼻)によく見られます。 3~8mmの黄白色の丘疹ないし扁平な隆起で、中央に臍窩 (小さな窪み)を認め、複数個有することが多いようです。 局所麻酔の注射を行ない、炭酸ガスレーザーや電気メスを使用して 治療してゆきますが、真皮内病変で比較的深くまで黄色の組織が 認められ、結果的には結構深い病変であることが多いです。 そのため余りに深いと傷が目立つため、それを目立たなくするため (陥凹を少なくするため)に広く削ることが必要になります。 その際は患部を軟膏とガーゼやテープなどで覆う閉鎖療法を 2~3週間行なう必要があります。 この病変は深い部位までの治療を躊躇しがちになり、どうしても 再発しやすい疾患だと思います。 2~3ヶ月という時間をかけて上皮化後の赤みが消退してゆきます。
☆POINT ①局所麻酔後に炭酸ガスレーザーで蒸散
7)毛細血管拡張性肉芽腫(化膿性肉芽腫)
外傷などが誘因となって生じた、毛細血管の増殖と血管腔の拡張を 伴う一種の血管腫。数mm~2cmの半球状に隆起した有茎性で 鮮紅色から暗赤色の軟らかい腫瘤。 こすったり、ひっかけたりなどの軽微な外傷で容易に出血したり 増大したりします。 治療法としていくつかの方法があります。
炭酸ガスレーザーによる治療では腫瘤の基部に多めに局所麻酔を 注入して隆起させて添加のエピネフリンの作用も相まって腫瘤が 白色調になったところを綿棒やガーゼで圧迫して出血をコントロール しながら蒸散させてゆきます。 大きい場合は電気メスでの処理の方が効果的だと思われます。 施術後の潰瘍は軟膏やガーゼ、テープなどでの閉鎖療法を行ないます。 部位や大きさによって閉鎖療法を行なう期間が異なります。
保存的治療としては当院では下記の治療を行なっています。
・ステロイド外用: 薬剤の血管収縮作用に伴う一時的阻血を利用します。 増大する勢いが弱まりますが、これだけで完治することは稀で、あくま でも併用療法の一つです。
・液体窒素凍結療法: 中心部の動静脈吻合部の血流を途絶えさせること を目指すため、強めに凍結させます。
・絹糸での基部結紮による阻血: くびれがはっきりしている場合には 有用です。週に1回ごとに来院していただき、少しずつより強く締め 付けていって壊死→乾固化させて脱落させるのが狙いです。☆POINT ①ステロイド外用+液体窒素凍結療法+絹糸結紮: 保存的治療となります。1週間ごとに通院。 ②局所麻酔注射後に電気メスや炭酸ガスレーザーで治療: 外科的治療であり、軟膏やガーゼで保護が必要です。8)鶏眼(ウオノメ)
足底や足趾にあった場合にウイルス性疣贅との鑑別が時に 必要となります。
通常の鶏眼処置(削り)で改善しない場合に局所麻酔を注射後 に外科的に切除します。 場合によっては電気メスや炭酸ガスレーザーを使用します。 皮下組織にまで及ぶ非常に深い病変であり、固い鶏眼組織を 全部除去して軟らかい脂肪組織を露出させる必要があります。 必然的に創は全層欠損状態ですから、大きさにもよりますが 部位的に不利なことを考えれば2~4週間の患部の閉鎖療法が 必要になります。 しかしながら、同じ生活環境を継続していれば必ずといって よいほど再発してしまいます。 自身の足と靴との相性をシューフィッターなどに相談しましょう。 またインソールやシリコン装具などでの保護も有用でしょう。☆POINT ①通常の鶏眼処置(削り) ②局所麻酔後に外科的切除:2~4週間の患部の閉鎖療法が必要 9)指趾粘液嚢腫
手指や足趾の後爪郭部と関節近傍にできる、中に透明なゼリー状の ムチンを含んだ偽嚢腫性病変で、水疱やイボ状の外観を呈することも あります。末節関節と後爪郭との間にできた場合には爪にも縦に陥凹 が出てきます。 原因は線維芽細胞からのヒアルロン酸過剰産生です。 (本質的には現局性のムチン沈着症)一方で関節近傍に生じるものは 関節部分のヘルニアであり所謂「ガングリオン」です。 治療法として必要なのは患部を瘢痕化させることです。諸家により 外科的手術療法、内容物除去+ステロイド局注あるいは液体窒素凍結療法 など種々の治療法が提案されてはいるものの、どの方法が本当に優れて いるのかは不明です。 但しできるだけ近くの爪への影響を避けたい、再発がありうることから 外科的治療よりは保存的な治療を優先させたい、根治のためには局所の 癒着・瘢痕化を少しでも惹起したい…との思いから、私は下記の方法を 選択しています。
内容物除去+凍結療法+日々の圧迫
具体的には、18Gの針で頂点を穿刺・切開して中のゼリー状物を絞り出します。 その後に液体窒素凍結療法を行ないます。さらにその後は患部を圧迫しますが、 抗生剤軟膏外用したあとで小さな綿球を患部の凹みにあてがい、その上に ガーゼをあてて強力な絆創膏で圧迫固定します。 翌日以降も可能ならばご本人に患部圧迫を継続していただき、2週間後に 再来してもらい、必要なら再度同じ処置を繰り返します。
☆POINT ①穿刺して内容物除去+凍結療法+日々の圧迫
参照 1)あたらしい皮膚科学 第2版 中山書店 2)皮膚科の臨床 Vol.55 No.12 2013 3)炭酸ガスレーザー治療入門 文光堂
医療法人社団 精華会 ミルディス皮フ科 村上 義之